海苔のこと 大森のこと

〈海光文庫〉

海苔のこと 大森のこと

 

A4判・上製・2010.12.1発行・須佐知行編 ISBN978-4-903470-52-8 C0062

 も く じ
  第一章 海苔のこと
  第一節 海苔漁の一年
 第一項 海苔漁の準備期(六月~八月)
 第二項 海苔採取場の認定作業(八月~)
 第三項 篊造せ 海苔漁の直前期(五月~十月)
 第四項 海苔漁期(十一月~三月)
 第五項 海苔漁を終えて(三月~八月)
  第二節 収穫期の海苔漁家の忙しい一日
 第一項 午前二時から昼まで
 第二項 昼から夕方まで
 第三項 夕方から就寝まで
 第四項 潮時とは
  第三節 海苔漁業を支えてくれた人たち
 第一項 シオトリ・ホシッカエシ
 第二項 漁家の子供たち
  第四節 海苔漁業を支えた仕事と道具・仕事着
 第一項 海苔漁業を支えた仕事
 第二項 海苔漁の道具
 第三項 海苔漁業者の仕事着
 第四項 海苔漁家の転業記
第五節 海苔漁の歴史
 第一項 文書に見る海苔漁
 第二項 大森海苔の創始者と永楽屋
 第三項 大森漁業協同組合の歴史
  第二章 大森のこと

  第一節 大森の地名の由来と歴史
 第一項 文書に著れた大森の地名
 第二項 大森の神社・寺院
 第三項 大森の小・中学校(海苔漁と関連して)
 第四項 大森の風景
 第五項 大森を流れる川と道
 第六項 地元の古い地図
 第七項 ガスの灯った町と三つのガスタンク
  第二節 大森と文化・芸能活動(映画・民謡)
 第一項 大森と文学者
 第二項 地域に芽生えた文芸活動
 第三項 森ヶ崎に芽生えた社会福祉事業
  第三章 二十一世紀の大森

  第四章 資料一覧

 

 須佐知行 関連書籍

 

 

忘れない大森の海苔 元生産者ら記録集出版 〈東京新聞2011.2.12〉

江戸前の海苔(のり)の一大産地として栄えた大田区・大森の歴史を後世に伝えようと、元生産者らが記録集「海苔のこと 大森のこと」を出版した。300年の海苔づくりに終止符が打たれてから50年近く。高齢化が進む当事者の証言を「最後の機会」と集めており、ページをめくると「街そのものだった」といわれる地場産業への誇りと惜別が伝わってくる。 (増田恵美子)
 東京湾に面した大森では江戸時代から海苔の漁が行われ、全国に先駆けて養殖も始まったとされる。ことに高品質の「浅草海苔」の産地として名をはせた。
 しかし、都会の漁場には高度経済成長期、埋め立て計画が持ち上がる。一九六二年、「国および東京都の発展に寄与するため不本意ながら」と地元は漁業権を放棄した。当時の生産者(養殖業者)は約八百軒だった。
 本のきっかけは、地元の寺、密乗院(同区大森中)の須佐知行住職(62)が二○○六年、元生産者の田村保さん(79)が撮影した戦後の作業風景の写真を見かけたことだった。「こんな貴重な写真が残っているのなら、記録集を作れるのでは」と、元生産者ら十八人に呼び掛けて、編集委員会を発足。四年間で三十一回の編集会議を重ねて、自費出版した。
 本では、田村さん提供を中心に約二百六十枚の写真や図を多用して、海苔漁の「一年間」と繁忙期の「一日」を再現した。
 冬の収穫期、午前二時に起床、収穫や、すいたり干したりするなどの作業に総出で取り組んだ漁を営む家の様子を紹介。地域では「もやい」と呼ばれる海の助け合い精神が強く、漁場内の場所の割り当ても毎年、くじ引きで決めていたことも分かる。
 須佐さんは「子どものころ、海苔の街だった大森の風景は忘れない。当時の海苔は本当においしかった。少しでも街の先人に感謝できれば」と語る。
 編集委員の一人、田中正一さん(70)=同区大森南=は中学を出て家業の生産者になったが、七年で会社員への転業を余儀なくされた。「今も海があったら、海苔屋を続けていた」と懐かしむ。現在は大森の海苔を伝える活動のボランティアをしており、「本という形に残すことができて感謝している。さらに知ってもらえたら」と話す。
 本は二千部発行し、区に一部寄贈した。

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読売新聞 2010.12.28

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産経新聞 2011.1.14

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朝日新聞 2010.12.25

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